とても好きな曲です。
では、冒頭から歌詞の意味を追ってみます。
あなたが八度七分の声を使うときは 必ずあたしに後ろめたいことがあるとき
汗ばんだって恥じらったって 理由もなく触れたがったりした
凍えたって甘えたって 只の刹那に変わった二人
「あなた」とは当時の恋人。
彼が、熱があるように苦しそうに演技しているのは、主人公である彼女にはお見通しです。「使う」と表現していることから、それが読み取れます。
「理由もなく触れたがったりした」のは、少しでも罪を軽くしたいという彼の気持ちの表れでしょう。おそらく、彼は浮気をしたのだと思います。
彼女がそれを悟った瞬間、二人の関係は終わってしまったのです。
その時全て流れ落ちた 冷たい秋はたった二度目でも
砂場の砂も気持ちも全部 二人の手で滑り落とした
この曲には、砂場、すべりだい、ごっこ、といったワードが登場します。子供が遊ぶ公園というのが、当時の彼との生活の場のメタファーになっていると私は感じました。当時の交際は、子供同士の遊びのような未熟なものであったと彼女は感じているのではないかと推察しました。
「冷たい秋はたった二度目」とあるので、付き合って2年程で、当初からあまり関係は平穏ではなかったような感じが伝わってきます。悲しみと共にある2年間を感じます。
砂場の砂を落とすとは、彼との生活を終えるという意味と思われます。
「二人の手で滑り落とした」とありますが、私は「二人の手で」というところに注目しました。彼が浮気をした、すなわち彼の心が離れていったということと、彼女自身も彼の浮気を悟り、彼女の方から別れるという宣言をしたということを意味していると思われます。彼女はそうせずには、自分を保つことができなかったのではないでしょうか。青年の人にとって、自分をいろいろな意味で否定するような、浮気という行為は、とても受け入れがたい困難だと思います。
その時全て壊れ落ちた 激しい雨には慣れていたけど
お得意の嘘や詮索ごっこが 最後の遊びへ導いていた
二人の間で起きた揉め事は日常茶飯だったけれど、彼の浮気が二人の関係の終わりを導いたということだと思われます。浮気に関する彼の嘘、彼女の詮索の繰り返しの中で、二人の関係の関係は壊れていってしまったのです。
このところ悔やんでばかり居る 口には決して出せないけど
今のあたしだったらあなたと 退(すべ)らずに済む様な気がする
彼女は本音を語ります。今の私だったら彼とうまくやっていける気がすると。本当は彼に未練があるのです。
彼の心が離れていったのは、彼女自身にも責任があったのだと省みています。
許されるなら本当はせめて すぐにでも泣き喚きたいけど
こだわっていると思われない様に 右眼で滑り台を見送って
記憶が薄れるのを待っている
浮気をされたことと、彼との別れは、当時の彼女にとても深い悲しみをもたらしたのだと想像します。
だけど、彼女にもプライドがあるのです。彼女の方から別れると宣言したのは、彼女をギリギリで保っていた、自身のプライドからでした。だから本音とは裏腹に彼女は彼との関係を終わらさざるを得なかったのです。
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