電車の中のドウブツ達について

また私の精神を錯乱させる出来事があるであろうとぼんやりと予期しつつ、電車に乗り込んだ。出入り口付近にニンゲンは固まっていたから、私は奥に行き、つり革を持ち自分の安全だと感じられるポジションを探し眺める。目の前に座るニンゲンの容貌を吟味する。鬼のような形相の婆、禿げたメガネ爺、選択肢はどんどん狭まる。仕方なく立ったポジションの目の前に座るニンゲンは、ベージュの小汚い布の帽子を目深に被り、縁のないメガネをかけ、メガネのレンズの向こうには気色悪い眼差しを認めることができた。その眼差しは私を射た。その刹那私は自分が物理的な衝撃を受けたのではないかという不安で、体から汗が吹き出し混乱した。振り返って鬼婆の前に仕方なしに立った。と、鬼婆の隣の空席に青いジャンパーをきたクソニンゲンが座った。座る前につり革を掴み、下ろした。そのきたねえ馬鹿な手が私に接近し、また私の心を刺した。

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